君の未来に、ぼくがいたこと。

陽翔は、放課後の静かな病院の待合室にいた。
手には診察後にもらった検査結果の封筒。
そして、その隣には、無言で座る父の姿。

「……どうだった?」
父の低く、少し震えた声が静けさを破る。

陽翔は小さく笑って言った。
「まぁ、いつも通りだよ。進行はしてるけど……まだ、大丈夫。」

「……嘘はつかなくていい。」
父は、封筒を見つめたまま、ぽつりと続けた。
「陽翔、お前、自分の命が限られてるって……わかってるんだよな。」

陽翔は一瞬だけ目を伏せた。でも、すぐにまっすぐな声で答えた。

「うん。わかってる。……でも、僕、逃げたくないんだ。」

父がはっと顔を上げる。

「夢があるの。映画を作りたい。……友達と一緒に、最高の作品を残したいんだ。」

「……でも、お前の体は……」
言いかけた父の言葉を、陽翔がそっと遮る。

「後悔したくないんだ。たとえ時間が短くても、僕の人生は僕のものだから。」

沈黙。

そして――

父は両手で顔を覆い、小さく震えながら涙を流した。

「……お前、本当に強くなったな……」

陽翔は静かに父の肩に手を置く。
「ありがとう。僕がここまで来られたのは、お父さんとお母さんがいてくれたからだよ。」

父は涙をぬぐいながら、顔を上げた。
目は赤く、でも力強かった。

「わかった。……もう、止めない。全力で応援する。……お前の命が輝くように、父さん、全力で支えるから。」

陽翔はその言葉に、胸の奥が熱くなるのを感じた。

「ありがとう。僕、絶対にやりきるから。」

父と息子。
ふたりの強い想いが、静かな病院の廊下に優しく、けれど確かに響いていた。