「…じゃあホンモノの家族の隣に座ればいいんじゃないかな?」
お互いに一歩も引かない空気が続く中、ウィリアム様はセオドアにそうにこやかに提案した。
「もちろんそうするつもりですよ。姉さんとアイリス姉さんの間に僕が座るんです」
「ふーん。でも2人ともなんて少々わがままなんじゃない?1人くらいは俺に譲るべきだよ?」
「どちらも譲れません」
「強情だね」
何を言い争っているんだ、全く。
2人のくだらない言い争いを呆れ半分で傍観していると、2人の向こう側、扉の横でどこか寂しげにこちらを見つめるレイラ様の姿が視界に入る。
あれは疎外感を感じている表情ではないだろうか。
無理もない。
レイラ様が行方不明だったこの6年間で、ウィリアム様とセオドアの関係は、レイラ様の知らない形へと変わってしまった。
きっとこのくだらない言い争いをする2人が、レイラ様には知らない2人に見えてしまうだろう。
だが、こんな不毛な言い争いで一番大切な存在を悲しませるだなんていただけない。
私はこの不毛な言い争いを終わらせる為にその場から立った。
そしてそのまま私の座っていた席にウィリアム様を強制的に座らせ、その右隣に私も座った。
「これでどちらの希望も叶えられるでしょ?不毛な言い争いなんてせずに打開策を考えなさい。私を動かすとかさ」
呆れながらも2人に文句を言う。
するとウィリアム様は、
「そうだね。レイラは左端に絶対座りたいんだと思ってたよ」
と、少しだけ困ったように優しく笑い、セオドアは、
「動けるなら動けると最初から言え。こののろま。アイリス姉さんを待たせるな」
と、とんでもなく冷たい表情でこちらを睨んでいた。
あれ?結果私が悪かったことになってない?
何故だ…。



