*****
結局、今日も全身セオドア監修の私が完成した後、ウィリアム様がもう到着しているらしい玄関へ、私は当然のようについてきたセオドアと共に向かった。
そして私たちは玄関ホールでレイラ様と鉢合わせた。
「あら、2人ともおはよう」
私たちの姿を見つけて微笑むレイラ様は相変わらず女神のように美しく、どこか神秘的だ。
レイラ様に会えて嬉しくなったのか、セオドアは先ほどまで私に向けていた氷のように冷たい表情がまるで嘘かのように、花のような笑みをレイラ様に向けた。
「おはよう、姉さん」
「おはようございます」
セオドアのあまりにも違う表情に私は内心苦笑しながらも、セオドアと同じようににこやかにレイラ様に挨拶をする。
「2人揃ってどこかに行くの?」
「そうなんだ。今日はウィリアム様に誘われて演劇を観に行くんだよ」
「まあ、演劇?私も行きたいわ」
「本当!?じゃあ一緒に行こうよ!」
ん?
ほんの少し2人を眺めている間に話がおかしな方向に進んでいることに私は気づく。
セオドアがそもそもどこへでもついてくるのはいつものことなので、ここまでついてきたことにも何とも思わなかったのだが、演劇にまでついてこようとしていたのか?
しかも今レイラ様のことも誘ったのか?
今日は私とウィリアム様、2人で演劇を観に行く予定だ。なのでもちろん演劇のチケットも2枚しかないはず。それを急に2人分も追加で用意するのは難しいのではないだろうか。
「いや、急に言われてもチケットの枚数が…」
盛り上がっているところに水を差すようで、大変申し訳ないのだが、私は2人が私たちの外出に同席することを断ろうとした。
したのだが。
「問題ないよ」
それは私の後ろからやってきた誰かの落ち着いた声によって遮られた。
いや、これは誰かではなく…。
「ウィル!」
レイラ様に明るく愛称を呼ばれた人物こそがその誰かであった。
「アイリスとセオドアのチケットも用意するよ。だから2人ともおいで」
ふわりと笑うウィリアム様に私は思う。
急遽でもチケットを用意してあげるほどレイラ様がやっぱり好きなんだなぁ、と。
愛だね。



