そんなことを思っていると、ウィリアム様がいない方の私の隣にセオドアが呆れた顔でやってきた。
「何、ぼーっとしているんだよ。しっかりしろ。隙を見せるな」
「…え?あー、はいはい」
今日も今日とて、とても冷たい顔で私を睨むセオドアに苦笑いを浮かべて適当に相槌を打つ。
どうせセオドアはとにかく私に文句を言いたいだけなので、反論するだけ無駄だ。
「リボン完璧じゃない。直す」
「…えぇ?」
冷たくそう言い放ち、私の服の首元のリボンを一度解き、せっせと結び直し始めたセオドアに、私は困惑しつつも、なされるがままで。
またセオドアの小言が始まった、とただただセオドアのやることを受け入れていた。
何が完璧ではなかったのかよくわからないが、好きにさせておいた方がいいだろう。
そんな私たちに暇な貴族たちはまたざわめき立った。
「アルトワ姉弟、本当に仲がよくて美しい」
「完璧なレイラ様がセオドア様の前でだけはどこか少し抜けているところがまたいいですね」
「セオドア様もレイラ様だけに優しくて世話焼きなところも推せるわね」
いろいろ言われているが、これも慣れたものなので全く気にはならない。
「すごい人ね」
そんな私たちの元、セオドアの横に今度はホンモノのレイラ様が現れた。
この人混みの中で微笑むレイラ様はまさにホンモノの女神様のようだ。
ただ、私とレイラ様が2人並んで現れれば、当然騒ぎになる可能性があると判断されたので、レイラ様にはレイラ様だと万が一バレないように姿を変える魔法が施されていた。
艶やかな黒髪は輝く金髪に、星空のような深い青い瞳は燃える炎のような赤い瞳に。
だが、しかし、色が違うだけで、美しいことに変わりはないので、やはりレイラ様はとても目立っていた。
それこそ、ウィリアム様やセオドアと共に来ているあの美しい女性は一体誰なのか、という噂話が先ほどから後を絶たないほど。



