「それ好きだった?」
「あ、はい」
あまりにも愛おしそうに私を見るウィリアム様に思わずドギマギしてしまう。
完璧な婚約者を演じる為とはいえ、こんなにも甘い瞳までできてしまうとはさすがウィリアム様だ。
何だか気恥ずかしくなり、ウィリアム様からスープの入った器へと視線を落としていると、「うちのシェフにも覚えさせるね、このレシピ」と言うウィリアム様の声が聞こえてきた。
誰がどう見ても完璧な婚約者。
婚約相手であるレイラ様をよく見て、気に入ったものや好きなものをすぐに覚え、彼女の為に次へと繋げる。
きっとシャロンの肩書きがなくても、ウィリアム様は誰からも望まれる存在だろう。
「ねぇ、レイラ」
そんなことを思っていると、突然、ウィリアム様が真剣な声でレイラ様の…いや、ここでは私の名前を呼んだ。
「結婚しようか、俺たち」
「…へ」
まさかの言葉に視線をまたスープの器からウィリアム様へ向ける。
するとこちらを真剣に見つめるウィリアム様と目が合った。
い、今、ウィリアム様は何て言った?
とんでもないことを言わなかった?
訳がわからず、とりあえず落ち着く為に、もう一度スプーンにスープをすくって口に入れる。
…うん。美味しい。
『結婚しようか、俺たち』
あれ?やっぱりウィリアム様、私にとんでもないことを言ったよね?
「け、結婚しようと言いましたか?私に?」
今、まさにウィリアム様から言われた言葉があまりにも信じられなくて、眉間にしわを寄せる。
「き、聞き間違いですよね?け、決闘しようか、とかでしたよね?」
「ふふ、決闘?違うよ、結婚だよ、結婚」
「…へ、あ、えぇ?」
ウィリアム様の言葉に狼狽えていると、ウィリアム様はそんな私におかしそうに微笑んで、私の言葉を丁寧に訂正してくれた。
そのおかげで私はさらに狼狽えた。



