「…私のことなんて置いて先に部屋に帰ってもいいし、学院にも行っていいんだよ」
少々セオドアに反発したい気持ちを押さえながらも、そう言うと、セオドアから「はぁ」と盛大なため息が漏れた。
「いつも言っているだろ?貴族の姉と弟のあり方を。何度も何度も言わせるな」
「…」
セオドアに〝貴族の姉と弟のあり方〟について言われてしまうと私は何も言えなくなる。
結局どんなに貴族のことを学んでも、ほぼ平民のような生活をしていた私では、貴族の価値観や常識などいつまで経っても身につかないのだ。
どんなにおかしいと思っても、生粋の貴族であるセオドアがそうだと言うのならそうなのだろう、となってしまう。
「食べられないのなら食べさせてやる」
「え!いい!いいから!自分で食べるから!」
黙ってしまった私をじっと見た後、何を思ったのか徐にフォークを手に取り、私のにんじんを己のフォークで刺そうとするセオドアを私は手をとにかく左右にぶんぶん振って止める。
子どもじゃあるまいし、本当に必要のないことだ。
あと普通に恥ずかしい!
「相変わらず仲良しねぇ」
「ああ、そうだな」
そんな私たちの変な攻防をアルトワ夫妻は微笑ましそうに、そしてレイラ様もまたその美しい星空のような瞳を細めて見つめていた。



