そんなホンモノの家族団欒に一応入っている空気を作りながらも、私は黙々と朝食を口に運び続ける。
やはり、ここの誰とも血の繋がりのない、唯一の部外者なので、疎外感を感じる。
だが、それは普通に仕方のないことなので、特に気にはならないのが正直な感想だ。
「おい」
アルトワ伯爵一家の家族団欒をBGMに朝食を食べ進めていると、突然セオドアが冷たい目で私を見てきた。
やはり先ほどまで見せていたキラキラ笑顔は幻だったようだ。
「にんじん、また後回しにしてるだろ?」
「え」
セオドアにそう冷たく指摘されて、自身の皿に視線を移す。
すると様々な温野菜が並ぶ皿の端に、少しだけにんじんが集まっているような気がした。
完全に無意識にそうしていたので、正直狙ってにんじんを後回しにしていたつもりはない。
「あとで後悔するのは姉さんなんだから後回しにするなよ。今食べろ」
「…えぇ」
いつものように冷たく責められて、つい嫌な顔をしてしまう。
にんじんのことは確かに正直得意ではないが、食べない訳ではない。
得意ではない分、自分のタイミングで食べたいのだ。
「あとで食べるからセオドアは気にしないで」
はは、と誤魔化すように笑うとギロリとセオドアに睨まれた。
「最後の方まで苦手なものを残して、睨みつけたまま固まるお前を何度見たと思ってるんだ。お前の食事が終わらないと僕も終われないし、学院にも遅刻するだろ」
何故、私は今、セオドアに責められ、怒られているのだろうか。
セオドアのあの態度は聞き分けの悪い、いつも同じ失敗をしている子どもに向けるものだ。



