光のない仄暗い瞳で、あまりにも冷たく、セオドアが私を見ていたからだ。
「…ど、どうしたの?」
怖い顔や冷たい顔のセオドアはこの6年間で嫌というほど見てきた。
だが、今、私に向けられているものは、その中でも特に冷たく、怖いものに思える。
先ほどまでのセオドアはレイラ様が帰ってきたおかげで、とても上機嫌だった。あんなにも弟らしい表情をレイラ様の前でなら浮かべられるのか、と思っていた。
それなのに今のセオドアにはその上機嫌さが一つもない。
「質問をしているのは僕だ。お前は今、こんなところでコソコソと何しているんだよ?」
レイラ様によく似た、美しいセオドアがそう言って私に凄む。それからゆっくりとこちらに近づいてきた。
私から一瞬たりとも目を離そうとしない、セオドアの瞳には冷たさと怒りしかない。
何故、セオドアはあんなにも怒っているのか。
そもそも何故大好きな姉さんであるレイラ様のところにいないのか。
目の前まで迫ってきたセオドアに対して、たくさんの疑問が湧く。だが、その疑問を今のセオドアにはぶつけられないので、私はセオドアの質問に答えることにした。
「荷造りだよ。ここからもう出るし」
「は?」
セオドアの様子を窺いながらも、何でもないように答えた私をセオドアがおかしそうに見つめ「荷造り?」と呟く。



