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レイラ様との再会を喜ぶ長いながーい会話に一応参加した後、私はレイラ様の部屋へと戻った。
そしていつものように予習復習をする為にまずは机へと向かったのだが、私はその足をその場で止めた。
もうその必要はないと気付いたからだ。
ホンモノの完璧なレイラ様が帰ってきた今、レイラ様の代わりである私は必要のない存在であり、もちろんもう完璧である必要もない。
私はもうレイラ様の代わりから、ただのリリーに戻れるのだ。
「…っ」
1人になり、改めて現状に実感が湧くと、言いようのない喜びが押し寄せた。
まるで夢でも見ているかのようだ。
6年前のあの日、確かに死んだリリー・フローレスが生き返る日がくるとは。
習慣である勉強を放棄した私はどこか落ち着かない夢心地のまま、レイラ様の部屋のクローゼット部屋へと向かうことにした。
お父様とお母様がいるフローレスへとすぐにでも帰る準備をする為に。
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レイラ様の部屋にあるクローゼット部屋。
そこには所狭しと様々なドレスやワンピースなどが片付けられており、私はそこで早速荷造りを始めた。
ここにあるドレスやアクセサリーなどは、全てレイラ様のものだ。今は私が使っているが、あくまでレイラ様の代わりとして借りているだけに過ぎない。
借り物であるそれらを持っていくわけにはいかないだろう。
なので、ドレスなどは荷造りをしているトランクの中には入れないことにした。
だが、逆に下着など着回すには抵抗のあるものは、トランクへと入れることにした。
どうせ置いていっても捨てられるのなら、そのまま持っていった方がいい。
床にトランクを置き、目に付いた下着を手に取る。
高級そうなもの、まだ数年は着れそうなもの、気に入っているものなどいろいろな基準で下着を選び、ある程度選び終えると、私は床に座り、一枚一枚丁寧にたたみながら、トランクの中へと綺麗に片付けた。
次は何を入れようかな?
「…何してるんだよ」
トランクを見つめ、何を入れるべきか考えていると、後ろから突然、誰かが冷たくそう声をかけてきた。
「…っ!?」
突然のことに驚いて、私は肩をびくりと震わせる。
それから恐る恐る振り向くと、そこには酷く冷たい表情で私を見下ろす、セオドアがいた。
「セ、セオドア?」
クローゼット部屋にいたとはいえ、全くセオドアがここへと入ってきた気配を感じられなかった。
もしかするとノックさえもせず、セオドアはレイラ様の部屋に入ってきたのかもしれない。
あのセオドアならそんなことをしても何ら不思議ではないし、何ならそうだった時もある。
それでも突然現れたセオドアに私は困惑していた。



