そんなことを考えていると、隣に座っていたウィリアム様が私の手に触れた。
「ねぇ」
それから私にしか聞こえないような小さな声で、囁くように私に声をかけてきた。
「いよいよ君の存在価値がなくなったね。何者でもなくなってしまった君はこれからどうするの?」
いつもと変わらぬ調子で何とも意地の悪い質問をしてきたウィリアム様。
二面性のあるサイコパスな彼らしいと、チラリとウィリアム様の方を見れば、ウィリアム様はどこかおかしそうに、だが、その瞳には何故か私を憂うような色があった。
…何故、そんな瞳をしているのか。
「ただ元に戻るだけです」
そう、私はレイラ・アルトワから、ただのリリーに戻るだけなのだ。
ふわりとウィリアム様に笑うと、ウィリアム様はそんな私を哀れそうに見つめた。
「大丈夫。今度は俺が助けてあげるから」
ウィリアム様が私を助ける?一体何から?
ウィリアム様の言動の一つ一つがどういう意味のものなのか、全くわからない。
だが、きっと考えても答えはわからないので、私はただただ曖昧にウィリアム様に微笑んだ。



