逃げたいニセモノ令嬢と逃したくない義弟と婚約者。






「ウィリアム様、姉さんは僕が連れて帰りますので。もう一度、お休みになってください」



ウィリアム様の行動にドキドキしていると、セオドアが私とウィリアム様の間に立ち、冷たい表情のまま、ウィリアム様にそう言った。
そんなセオドアにウィリアム様が「え?」とどこかおかしそうに首を傾げる。



「どうしてセオドアがここにいるの?俺を探しているのはレイラでしょ?それにセオドアがレイラと一緒に帰る?一緒に帰るのは俺なんだけど」

「姉さんが探しているのですから、僕も一緒に探すのは弟として当然です。ウィリアム様はお休み中のようですし、僕が姉さんと帰ります」



ふわりと微笑んでいるが、どこか冷たいウィリアム様と、元々冷たいセオドアが睨み合っているように見えるのは、私の目がおかしいからだろうか。
一体互いに何が気に食わなくて、こんなことになっているのかいまいち原因がわからないが、いつものことなのであまり深くは考えない。

そんなことを1人で思っている間にも2人の変な口論はもちろん続いていた。



「弟だからってセオドアは少し姉さんにくっつきすぎじゃない?普通じゃないよ?」

「普通?これが僕たち家族の普通ですが。部外者は黙っていただいてよろしいですか?」

「部外者?それは君でしょ?俺は将来レイラと結婚する仲だよ?ホンモノの家族になれるのは俺だけだから」

「家族なのは僕です」

「俺だよ」



何だこれ。

私の目の前で変な口論を続ける2人に思わず呆れてしまう。



「ウィリアム様」



傍観していても終わりそうにないので、私は2人の口論に入ることにした。