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校舎内を1人で歩きながらも、ウィリアム様の姿を探す。
ウィリアム様と帰らないにしても、一緒に帰る約束をしていたことは事実なので、一言言ってから帰らなければならない。
ここでもウィリアム様との身分の差を感じて嫌になる。
…本当は約束をすっぽかすやつに一言だって言わずにさっさと帰りたいのに。
教室、図書室、生徒たちが集まる多目的室など、ウィリアム様が居そうな場所は全て探した。
それでもウィリアム様の姿はどこにもない。
残るウィリアム様が居そうで、探していない場所といえば、学院の屋上にあるガラスドームの空中庭園だけだ。
あそこには鍵がないと基本入れない。
さらにその鍵は職員室で受け取れるのだが、ほんの一握りの選ばれた生徒のみしか受け取ることのできないものだ。
もちろん王家と同等の力を持つシャロンのウィリアム様なら難なく受け取れるもので、私もそのシャロン家の婚約者として、それを受け取る資格が一応あった。
鍵を受け取りにまずは職員室に行かなければ。
そう考えた私は職員室へと向かうことにした。
したのだが。
「おい」
私は後ろから誰かに冷たく呼び止められ、その場で足を止めた。
この聞き覚えしかない冷たい声は…。
「…セオドア」
声の方へと視線を向けると、そこには私に冷たく声をかけてきた人物、セオドアがいた。
「今にも死にそうな顔でどうしたんだよ?」
「…まぁ、いろいろあってね」
怪訝そうに私を見るセオドアに私は力なく笑う。
今起きている出来事をセオドアに全て説明する気はない。面倒だからだ。



