逃げたいニセモノ令嬢と逃したくない義弟と婚約者。





この6年でウィリアム様の身長はぐっと伸び、美しく成長していた。
柔らかそうな少し長めの銀髪とこちらを見つめる黄金の瞳は宝石のようだし、目鼻立ちがはっきりとした整った顔立ちは、相変わらず精巧に作られた人形のように完璧だ。

ついこの間18歳になった今のウィリアム様にはもう出会った頃のような幼さは残っていなかった。



「ありがとうございます、ウィリアム様。ですがさすがなのはウィリアム様の方です」

「そう?」

「そうです。だって今回もウィリアム様が1位じゃないですか。もうずっとですよ?」

「はは、まあ、そうだね」



私に褒められてウィリアム様が嬉しそうに笑う。

この6年で私たちの関係は随分穏やかなものへと変わった。
あんなにも会うたびに私に嫌がらせをしてきたウィリアム様だったが、ウィリアム様の事情を知ったあの日以来、その嫌がらせがなくなったのだ。
たまに約束の時間に来なかったり、約束をすっぽかされたりすることもあったが、その程度だった。
ウィリアム様に紅茶をかけられることも、私のものを壊されることも今ではもうない。



「今回も頑張ったし、ご褒美が欲しいな?」

「ご褒美ですか?」



伺うようにこちらを見るウィリアム様に首を傾げる。
そもそも頑張ったって本当に頑張ったのだろうか。
ウィリアム様が必死に勉強をしている姿なんて見たことないような気がするのだが。
そもそもご褒美って一体…。

そんなことを考えていると、ウィリアム様は私の髪を手に取り、その美しい唇をゆっくりと私の髪に落とした。



「…っ!」



思わず驚きで叫びそうになるが、それを私は必死に堪える。