ふとそう思い、不安になる夜もあった。
それでも俺には希望ができた。
彼女こそ俺の唯一の希望になった。
自分と同じ完璧な何かにならざるを得ない可哀想な存在の彼女。
最初はそんな彼女が哀れなもう1人の自分を見ているようで、どこか不愉快だった。
だが、その不愉快な思いを彼女にぶつけると、その思いは形を変えた。
彼女は俺から嫌がらせを受けても、こちらを怒りのこもった瞳で睨むだけで、数日後には変わらぬ様子で俺の前に現れたのだ。
完璧ではない俺を見ても彼女は変わらなかった。
それが嬉しくて嬉しくて、俺を受け入れるしかない彼女の存在が完璧ではない俺を肯定しているようで堪らなかった。
だから彼女に会うたびにいろいろな嫌がらせをした。そしてそれでも俺から離れられない彼女を見て、俺は安心した。
完璧ではない俺を受け入れられる存在がこの世にはたった1人だけいるのだ、と。
俺を睨む顔、俺からの嫌がらせに泣きそうになる顔、どれもどれも哀れで哀れで愛らしい。
彼女はたまたまだが、父上と俺の冷めた会話を聞いてしまった。
彼女はあの時どんなことを思っていたのだろうか。
自分と同じ存在の俺に同情した?
一緒なのだと仲間意識ができた?
どうであれ俺には彼女の本音はわからない。
ただ彼女は今まで見てきた彼女の表情の中で、一番感情の読み取りづらい、複雑な表情を浮かべていた。
これからはそんな彼女にもっと優しくしてもいいのかもしれない。
それからまた気まぐれに彼女に嫌がらせをして、変わらぬ彼女の存在を確かめてみよう。
大丈夫。彼女はどんなに嫌なことをされても俺から離れられない。
彼女が完璧なレイラであり続けるのならば、俺の婚約者であり続けることが必須だから。
「ふふ」
彼女のことを思うと自然と笑みが溢れた。
こんなにも自然に柔らかく笑える自分がいたとは驚きだ。
また2日後には彼女に会える。
足早に帰ろうとした彼女にそう約束を取り付けたから。
2日後に会える彼女のことを思って俺は笑みを深めた。
ーーーああ、早く会いたいな。俺だけの完璧な婚約者に。



