逃げたいニセモノ令嬢と逃したくない義弟と婚約者。






レイラなら絶妙に選びそうにない、高級感のある白いシンプルなドレスを身にまとい、低い位置で二つに結ばれた髪を揺らしながら歩く彼女はやはりレイラと似ているようで似ていない。

彼女の話ではどうやら彼女の全身は弟であるセオドアが決めているようで、そこにセオドアの意思を感じた。

まず一つは彼女を自身の姉、レイラと同じものには絶対にしないという意思、そしてもう一つは本当に彼女に似合うものを選び、自分の好きなようにしている、というものだ。

最初の意思は正直どうでもいいのだが、彼女を好きなように扱われていることについては、あまり気分のいいものではなかった。
彼女はあくまで俺の婚約者で、俺のものなのだ。
それを外野から、自身のものだと主張されているようで面白くない。

じっと彼女のことを見ていると、ふと、彼女がこちらを振り返り、遠目ながらも目が合った。
俺と目の合った彼女は一瞬、驚いたような表情を浮かべて、引きつりながらも何とか笑みを作ると、ぎこちなくこちらに一礼する。

何と愛らしい少女なのだろうか。
レイラとは違い、完璧さはまだないが、その愛らしさ故に自身の婚約者として繋ぎ止めておきたいと思ってしまう。
だからこそ、父上に俺はいつも嘘をついていた。
彼女こそがこの国一のご令嬢なのだと。

顔を上げた彼女は未だに引きつった笑みを浮かべている。そんな彼女に俺はふわりと微笑み、ゆらゆらと手を左右に動かした。

彼女は当然ながら俺のことが苦手だ。
理由は俺から毎回毎回嫌がらせを受けているからだ。

だが、どんなに俺のことが苦手でも彼女は完璧なレイラとして、俺から離れられなかった。

やはり、あの愛らしい存在は俺と同じだ。

完璧な何かにならなければならない、そうでなければ存在価値のない、哀れな存在。
俺は生まれながらに持っているものも多く、常に完璧で一番だったが、そうでなかった場合のことをいつも父上や母上に言われていた。

『完璧でなければ、完璧になれるまで、お前を幽閉する』
『完璧ではないお前など、誰も見向きもしない』
『完璧ではないお前に価値などない』

これが父上によく言われていた言葉だ。

完璧であるからこそ、誰からも羨望の眼差しを受け、大切にされている俺だが、もし、その完璧さがなくなれば、俺はどうなってしまうのだろうか。