だが、そこまで考えて私はふと思った。
その気を使うべき相手は今どこにいるのだろう、と。
先ほどまですぐ後ろに感じていたウィリアム様の気配が今はもうない。
つまりウィリアム様はここから離れたどこかにいるということだ。
そう思った私は座っていたが一度立って、周りを見渡した。
見渡す限り美しい景色。開けた場所の周りは木々に囲まれており、その先が全く見えない。
どこかにウィリアム様がいるはずだ、といろいろな場所へと視線を向けるが、その姿はどこにも見当たらない。
この自然の中でゆっくり寝ているからこちらからは見えない、とか?
「ウィリアム様!どこにいるんですか!」
私は見えない場所にいるウィリアム様を探す為に、その場で目一杯叫んでみた。
だが、ウィリアム様から返事はない。
「ウィリアム様!ウィリアム様!」
なので、私は今度はその場から駆け出して、この開けた場所中を探してみることにした。
だが、やはりどこにもウィリアム様の姿はない。
…嘘でしょ?
ここまで複雑な道をウィリアム様と共に来た。
木と木の間を縫うように歩いてきた為、当然帰り道なんて覚えていない。
今日の嫌がらせはこれなの?
「…はぁ」
1人で帰れる気がしないがここにいても仕方がない。
私は大きなため息をついてから、ウィリアム様と共に最初に来た場所へと戻った。
そこから道なき道を何となく勘と薄れすぎている記憶を頼りに突き進んだ結果、約1時間後、私は何とか知っている道に辿り着いた。
ウィリアム様と一緒だった時はたった数分しかかからなかったのに。
やはりウィリアム様の嫌がらせはかつてのセオドアとはまた違った方向で最悪だ。



