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アイツと泣き合ったあの日以来、僕はアイツへの嫌がらせをやめた。
そしてアイツのすぐ横で目を光らせると決めた。
アイツが完璧な姉さんになり、姉さんの場所を本当に奪ってしまわないように。
だから僕は今日も姉さんの部屋で、必死に授業の復習をしているアイツの横にわざわざ椅子を持ってきて、座っていた。
テキストを睨んではノートに問題の答えを書いてみたり、大事なところをまとめたりしているアイツの様子をじっと見つめる。
コイツが今やっているところは信じられないが、6歳の子どもがやるところだ。
基礎中の基礎に何故か頭を抱える姿に呆れるどころか、かわいそうになってくる。
コイツは腐っても男爵令嬢だったはずだ。
それなのに貴族としての基礎さえもわからないとは。
学ぶ機会がなかったのか、学んだがあまりにも馬鹿すぎて頭に入っていないのか。
わからないが、いかにコイツがいろいろな面で恵まれていなかったのかだけはわかる。
「ちょっと、そこ違うんだけど?さっきも同じ間違いしてたよね?何度繰り返せばいいんだよ?学ばないね?」
ノートにまた間違ったことを書いているアイツに僕はため息をつきながら注意をする。
アイツはやっぱり馬鹿だから勉強ができないようだ。



