アイツは姉さんの代わりだ。
つまり姉さんが帰って来るまではアイツが姉さんなのだ。
僕の大切な姉さんに危害を加える者は許せない。
使用人扱いする者も許せない。
だから僕はアイツを取り巻く環境を徹底的に調べ上げた。
そしてアイツがここで受けてきた数々の嫌がらせをお父様に報告した。
もちろん自分がやったきたことは伏せて。
「セ、セオドア様!セオドア様ならわかっておりますよね!?アイツがニセモノであることを!ニセモノがホンモノに成り代わろうとしているということ!私たちが、私たちがレイラ様の場所をお守りしなければ一体誰があの方の場所を…」
そこまで必死に叫んでヴァネッサは突然黙った。
僕の表情を見たからだろう。
「アイツ?お前如きが僕の姉さんをアイツ呼ばわりとは…。ヴァネッサ、随分偉くなったんだね」
「…あ、いや、ちが…」
僕の冷めた表情を見て、ヴァネッサがおろおろし始める。
何か言いたいようだが、恐怖で口が回っていない。
「ヴァネッサ、お前はクビだ。それからレイラにしてきたことについて騎士団に突き出す。少なくとも毒殺未遂の容疑はかけられるだろう」
「そ、そんな…。は、伯爵様。ど、どうか、ご慈悲を…。私はレイラ様とセオドア様の乳母であり、お二人の第二の母のような存在で…」
「連れて行け」
お父様に冷たく命令され、ヴァネッサのすぐ後ろに待機していた2人の男の使用人がヴァネッサの両脇を押さえる。
そして「いやぁ!連れて行かないで!どうか!どうか私のお話を聞いてください!伯爵様ぁ!セオドア様ぁ!」と絶望した顔で叫び続けるヴァネッサを連れて行った。
僕はそれをただただ無表情に見つめていた。
姉さんに危害を加える者は消すだけだ。



