「な、何で!何でそんなことをするの!?ふざけるな!」
気がつけばそう叫び、セオドア様の元まで駆け寄ると、私はセオドア様の胸ぐらを掴んでいた。
「私がアンタに何をしたっていうの!?」
「うるさい!お前の存在自体が不快なんだよ!出て行けよ!」
「出て行けるものなら出て行きたいよ!こんな家!」
「じゃあ、出て行けよ!消えろ!ニセモノ!」
叫ぶ私にセオドア様も負けじと叫ぶ。
いつの間にか私たちは互いに一歩も引かない姿勢で、互いをきつく睨み合っていた。
今までの上下関係がまるで嘘かのような状況だ。
「…姉さんは死んでいない」
続く叫び合いの中で、セオドア様が突然、小さな声でそう主張する。
「姉さんは生きている。絶対に帰ってくる。だから姉さんの代わりのお前なんて必要ないんだよ」
私に胸ぐらを掴まれたまま、どこか弱々しくそう言ったセオドア様に腹が立つと同時に胸が痛んだ。
痛いほど伝わってしまうセオドア様のレイラ様への想い。
レイラ様が未だにみつからないことが、レイラ様を探すことを諦めて、新たなレイラ様が現れたこの現状が、ずっとセオドア様は受け入れられないのだ。
それがきっと普通だ。
セオドア様も辛いのだと、私もわかっていたつもりだった。
それ故に酷いことばかりしてくるセオドア様に対して、苦手意識はあれど、憎みきれないのはそういった事情が
薄ら見えていたからだ。
セオドア様の胸ぐらを掴んでいた手から力が抜けていく。
「私はアナタの姉なんかじゃない。アナタの姉、レイラ様は必ず帰ってくる。それまでの代わりが私ってだけ」
それから私の手はセオドア様の胸ぐらから離れ、力なく下へと落ちた。
意味がわからないが、涙も流れ始めて止まらない。



