「…こんなものがそんなにも大切?」
「…は、はい。それは私が持つものの中で一番大切なもので…」
「ふーん」
私の答えを聞き、セオドア様が興味なさげにロケットのチェーンの部分を持ち上げる。
それからゆらゆらと揺らし、その様をしばらく見つめると、セオドア様はロケットを開けた。
セオドア様がじっと私の大切な家族写真を見つめている。
嫌な予感がする。
「やめてください」
「は?」
気がつけば私はここへ来て初めてセオドア様に強い口調で話しかけていた。
「今すぐそれを私に返してください」
「僕に命令するなよ。生意気だな」
私の態度を見てセオドア様が不愉快そうに表情を歪める。
そしてロケットから器用に家族写真を抜き取ると、ロケットだけその場に放り投げ、家族写真を自身の手のひらへと置いた。
「な、何をするつもりですか!お願いです!やめて!」
「何をするつもりって…。わかっているんじゃない?」
平静さを失い、叫ぶ私にセオドア様がニヤリと笑う。
それからセオドア様は私に見せつけるように写真を置いていた手を握り締めた。
ーーー私が、リリーがリリーである唯一の証がぐちゃぐちゃになっている。
そう思った瞬間、私の中で何かが壊れた。



