それから私は気がついた。
そんな美しいセオドア様の手に私のロケットペンダントがあるということを。
「…あっ」
セオドア様の手にあるものに思わず声を上げる。
あれは私、リリー・フローレスがリリーであると唯一証明できるものなのだ。
リリー・フローレスはここへ来た時、死んだ。
なので、私が私であると証明できるものはここへ来る前、全て処分された。
それでも私はどうしてもリリー・フローレスとしての欠片を一つだけでも持っていたかった。
だからお父様に懇願した。
そしてお父様はそんな私の願いを聞き入れ、あのロケットの所持を許してくれたのだ。
あのロケットの中には私とお父様とお母様、3人の家族写真がある。
あれだけが私がリリーであると証明できる唯一のものなのに。
それが今セオドア様の手の中にあるだなんて。
「…セ、セオドア様。そ、それは私の大切なものなんです。そ、それを返してください」
これ以上セオドア様に近づくとセオドア様を刺激してしまうような気がして、その場で声を振るわせながらセオドア様に切実に訴える。
「お、お願いします…」
それから私は深々とセオドア様に頭を下げた。
あれは私の心の支えだ。
何故、私がここでレイラ様として頑張っているのか、その意味を再確認できるものなのだ。
それを失うなんて耐えられない。



