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セオドア様に少々邪魔されたが、何とか洗濯物を目標時間内に干し終えた私は、あと30分後に始まる授業に間に合うように、慌ててレイラ様の部屋へと移動していた。
この調子でいけば、授業開始15分前にはレイラ様の部屋へ着き、授業準備もできるはずだ。
15分もあれば、せめてテキストの内容を確認することもできる。内容を理解できるかどうかは別問題だが。
そんなことを考えながらも、やっとの思いで辿り着いたレイラ様の部屋の扉に手をかける。
それから扉を開けるとレイラ様の部屋に誰かがいた。
「誰?」
思わず反射でそこにいる誰かに声をかける。
大きな窓の前で佇む人物。
窓から差す柔らかな太陽の光を浴びて、こちらに背を向ける人物に私は嫌な予感がした。
艶やかな短すぎず、長すぎない黒髪。
華奢な私と同じくらいの背丈の男の子。
少し考えてそこにいる人物が誰なのかわかった。
ーーーセオドア様だ。
何でセオドア様がここに?
先ほどの様子のおかしかったセオドア様のこともあり、不安になる。
「…セ、セオドア様?」
私がこの部屋に入ってきたことに気づいていないのか、未だにこちらに背を向けたままのセオドア様の名前を恐る恐る呼んでみる。
するとセオドア様はやっとこちらに振り向いた。
「…っ」
太陽の光を背に浴び、逆光になっているセオドア様のわずかに見えた暗い表情に思わず息を呑む。
セオドア様の空色の瞳には光が一切ない。
美しいが故にどこか虚なセオドア様はまるで人形のようだった。



