瞼を閉じてどのくらいたったのだろうか。
気持ちよく寝ていると、突然その声は聞こえてきた。
「おい。こんなところで寝るな」
聞き覚えのある冷たい声に瞼を開けると、そこには立ったままこちらを呆れたように見下ろしているセオドアがいた。
そんなセオドアについ反射で「あ、ごめん」と謝罪し、上半身だけ起こす。
こんなところをセオドアに見られるなんて。
また小言が始まるぞ。
「そもそも年頃の令嬢がこんなところで1人で寝るな。危ないだろ。せめて寝たいなら使用人を横に置け。そのくらい分かれ。何年アルトワの令嬢をやっているんだ、お前は」
ほら、やっぱり。
こちらを冷たく見据え、私の予想通りに小言を言い始めたセオドアに思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「返事は?」
苦笑する私を見て、セオドアは片眉を上げ、私に凄んだ。
「…はぁい」
「…気に食わない返事だな」
私の気の抜けた返事にセオドアがため息を漏らす。
だが、セオドアは「まあ、いい」と諦めたように言い、こちらに改めて視線を向けた。
「使用人に頼めないなら僕に頼め」
「え」
セオドアの予想外の提案に思わず目を見開く。
あのセオドアが私に優しい?何故?
信じられないものでも見るようにセオドアを見つめていると、そのセオドアが「返事は?」と冷たく私に返事の催促してきたので、私は慌てて「うん」と頷いた。



