何故アルトワが周りに伏せようとしていたことが、こんなにもあっさりと広まってしまったのか。
そのことを常々疑問には思っていたが、今のレイラ様を見れば、あっさりと広がってしまった原因がわかってしまった。
レイラ様自身が発信していたので、伏せようがなかったのだ。
私は確かにレイラ様とあまり話さないが、それは基本ウィリアム様やセオドアなどの誰かがその場におり、話す必要や機会がなかったからだった。
睨んだ覚えももちろんないし、どう考えてもレイラ様の勘違いか、嘘だろう。
セオドアやウィリアム様が私に縛られているという話もあまりにも作り話すぎて、レイラ様が悪意を持ってああしているのだとわかってしまった。
もしかしたら、かなり鈍感なレイラ様が本当にそう思っていた、と考えるのもありかもしれないが、あの思慮深く、人のことをよく考えられる完璧なレイラ様がそこだけはわかりませんでした、となるだろうか。
「ねぇ、どうか私がこんな弱音を吐いていることなんて誰にも言わないでね。私は常に完璧でいたいから」
美しい涙を流しながらもメイドたちにそう訴えたレイラ様を見て、私はなるほど、と腑に落ちた。
ああいうふうに訴え、願うことによって、全ての情報源であるレイラ様という存在を上手く隠していたのだ。
レイラ様を大切に思っている人にのみ弱音を吐き、それを黙らせる。きちんと人を選んでレイラ様はあることないことを言っていたのだろう。
レイラ様に弱々しく訴えられたメイドたちは案の定、「もちろんでごさいます!」「私たちだけの秘密です!」と明るく胸を張って言っていた。
…全てレイラ様の嘘だと知らず、面白いくらいにメイドたちが踊らされている。
レイラ様は慈悲深い仮面の裏で私を排除する為に、嘘を編み、噂を操っていた。
まあ、レイラ様からしたら本来自分が得られるはずの恩恵を受け続ける私なんて、邪魔で邪魔で仕方ないのだろうけど。
てっきり女神様のように慈悲深いレイラ様なら、そんなことなど気にせず、ゆったりと構えていると思っていたのに。
それを邪魔だからと、さっさと消す為に、ああして動くとは。
何と計算高く恐ろしいお方なのだ。
あのウィリアム様とセオドアと渡り合えるだけのことはある。すごい性格の悪さだ。



