「…私のことを本当の娘としてそこまで考えていただき、本当にありがとうございます。ですが、学院にもアルトワにも私の居場所はないんです。本来、私はここにいるべき人間ではないから」
2人の愛情に熱くなる胸をぐっと抑えて、私は伝えねばならないことを2人にただ伝える。
「私はここにいていい人間ではないんです」
「そんなことっ。そんなことないわっ。アナタは私たちの娘で、ここにいるべき人間で…っ」
私の言葉についに奥方様の瞳から涙がこぼれ落ちた。奥方様の涙は止まらず、隣にいる伯爵様が奥方様のことを気にかけるように見つめる。
それから私の方へと視線を向けた。
「ここはそんなにも君にとって居心地の悪い場所なのか?」
「…はい。そうです」
「…そうか」
私の答えを聞き、伯爵様の顔色も悪くなる。
大切に思っていた娘から面と向かって「ここの居心地が悪い」と言われれば、誰だってあんな顔をしたくもなるだろう。
だが、この居心地の悪さは決して彼らのせいではない。
私がレイラ様の代わりでい続けたこと、そしてそれに怒りを感じて嫌がらせを続ける周りが悪いのだ。
奥方様と伯爵様は何も悪くないのに、まるで2人が悪いのだと責めているような今の状況にますます胸が痛くなった。
「…ア、アナタがそう思うのならこれ以上、私たちのエゴでアナタを縛るわけにはいかないわね」
伯爵様と私のやり取りを泣きながら聞いていた奥方様は未だに泣きながらも私にそう言った。
「ねぇ、アナタ、この子が願うならこの子を解放してあげましょう」
「…セイラ」
奥方様にじっと見つめられて、伯爵様が難しい顔をする。
それから伯爵様は何かを考えるように黙ってしまった。



