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だが、しかし限度というものがあるだろう。
学院での嫌がらせが始まり3週間。
アルトワ伯爵家での嫌がらせが始まり4週間。
レイラ様のニセモノとして嫌がらせを受け始め、もう1ヶ月。
さすがの私も我慢の限界を迎えていた。
イザベラ様を始め、生徒たちの怒りも、アルトワ伯爵家の使用人たちの怒りもわかる。
痛いほどわかる。
だからこそ、反撃も反論もすることなく、彼らの怒りが収まるのならと、あの嫌がらせや嫌味も黙って受け続けたのだ。
だが、それは収まるどころか私を排除しようと、激しさを増す一方だった。
6年前とは違い、あまりにも四方八方敵だらけでさすがの私も疲れてしまった。
きっともう耐えるだけでは、この大きな怒りは収まらないだろう。
この大きな怒りを収めるには、怒りの原因である私自身が消えるしかない。
レイラ様が帰ってきた当初の予定では、混乱を招くことを恐れ、段階を踏んで、私とレイラ様が入れ替わる予定だった。
なので、その予定に従い、今日まで何を言われても、何をされても、私はレイラ様であり続けた。
だが、しかし、今の状況でもそうすることが果たして本当にベストなのだろうか。
学院中の生徒も、アルトワの使用人も、全員が私がニセモノだと知っており、恐れていた事態はすでにもう起きてしまっているのだ。
私がニセモノだと周知された今、私はもういらないし、消えるべき存在だろう。



