受難の日々が続いたある日のこと。
ウィリアム様とセオドアに挟まれて、学院内廊下を移動していると、イザベラ様を先頭にしたご令嬢の集団と鉢合わせた。
「ウィリアム様、セオドア様、ご機嫌よう」
こちらの行手を阻むように立ち、美しい所作でイザベラ様がウィリアム様とセオドアだけに挨拶をする。
それからこちらを一瞥して、ウィリアム様たちに気遣うような視線を向けた。
「失礼ながらお伺いしますが、何故お二人はそのようなニセモノとご一緒にいらっしゃるのですか?お二人が一番無念でしょうに…」
イザベラ様の言葉に、イザベラ様の後ろに控えていたご令嬢たちが、「お可哀想に」「お二人にとってレイラ様は大切なお方のに」と、口々に同情の声を漏らしている。
だが、ウィリアム様とセオドアはそんな彼女たちをおかしなものでも見るような目で見た。
「ニセモノ?」
まず、そう不思議そうに口を開いたのはウィリアム様だ。
「彼女は一体何のニセモノなのかな?仮に彼女がニセモノだったとしても、そんなこと俺には関係ないよ。彼女だからこそ俺は彼女の傍にいるんだ」
誰もが憧れる王子様のような完璧な笑みを浮かべるウィリアム様だが、その黄金の瞳はどこか冷たい。
「珍しく意見が合いますね、ウィリアム様。僕も同じ考えです。ですからそんな無駄なことで僕たちに話しかけないでください」
そんなウィリアム様の言葉にセオドアも冷たい表情のまま頷き、イザベラ様たちを睨んだ。



