逃げたいニセモノ令嬢と逃したくない義弟と婚約者。





そして何かありそうだとは思っていたが、悪い意味でその何かがあってしまった。



「アナタ、レイラ様のニセモノなのよね?」



イザベラ様に連れてこられたのは人気のない中庭で。
そこでイザベラ様は私を嫌なものでも見るような目で見た。
さらにイザベラ様の言葉を合図にイザベラ様の友人のご令嬢たちが複数人この場に現れた。
全員が全員、私を憎しみの対象でも見るかのような目で見ている。



「私はね、レイラ様…いえ、レイラの親友でしたのよ?けれど、レイラが行方不明になった6年前、私たちの関係はガラリと変わってしまった。行方不明になったレイラは記憶を失い、私たちは疎遠になってしまったの。私はレイラの負担にはなりたくなかった。だからいつかレイラが私という親友を思い出すその日まで、私はレイラを待ち続けたわ。その結果がこれだなんて」



初めこそ悲しみに暮れていたイザベラ様のオレンジ色の瞳に徐々に怒りの色が現れる。



「つい3日ほど前に私は本当のことを知ったわ。最初は信じられなかったけれど、確かにアナタは6年前の私の知っているレイラとは似ているようでどこか違っていた。違う人物だったのだとわかれば、ずっと感じていた違和感がなんだったのかわかったわ。アナタがニセモノだったから感じていた違和感だったのよ」



そこまで言うとイザベラ様は手に持っていた扇子をビシッとこちらに向けて、力強く私を睨んだ。



「アナタがレイラの場所に居座り続けるからレイラが本来の場所に帰れないのよ!私の親友レイラを返しなさいよ!このニセモノ!」



イザベラ様に叫ばれて、私は何故、先ほど周りにいた生徒たちに不躾な視線を向けられていたのかわかった。
生徒たちもきっとイザベラ様のように私がニセモノであると知ってしまったのだ。