何だろう。
そう思ったのと同時に誰かが私の左手をぎゅっと握り締めてきた。
私よりも大きく、太い骨のある手が励ますように私の手を掴む。
男の人の手。
そこまで考えて誰が私の手を握っているのか察した。
きっとまだこの部屋に残っていたセオドアが私の手を握っているのだ。
「…セオ、ドア?」
様々な痛みに耐えながら、左手の方へと視線を向けると、そこには椅子に座り、こちらをじっと見つめるセオドアがいた。
その瞳には心なしか私を憂う色がある気もするが、辛すぎてそんな幻を見ているのかもしれない。
「寝ろ」
セオドアのことを何となく見ていると、またセオドアは空いている方の手で私の目を覆った。
苦しい、辛い。
冷や汗が止まらない。
辛い、辛い。
そう思う度に左手にセオドアを感じ、とても不思議な気持ちになった。
こうして私は一晩中苦しさの中で眠れない夜を何故かセオドアと過ごしたのだった。



