「アイリス姉さん、美味しいね」
「そうね、セオ」
私の左隣に座るセオドアとそのセオドアの左隣に座るレイラ様が美しく微笑み合っている。
「ふふ、今日もいい1日だったわ」
「そうだな、セイラ」
それから奥方様と奥の席に座る伯爵様もレイラ様たちと同じように美しく微笑み合っていた。
美しいアルトワ伯爵一家の微笑ましい美しい夕食。
そこに紛れたニセモノはそんな彼らを傍観しながらも、スープに口をつける。
「…」
そして私は気がついた。
私が今飲んだスープに毒が含まれていたことに。
*****
夕食後、私はすぐにレイラ様の部屋へと戻り、ベッドで1人でうずくまっていた。
耐えられないほどではないが、それでも辛い腹痛と頭痛が私を襲う。
やはり、あのスープには毒が含まれていたようだ。
では一体何故、あのスープに毒が含まれていたと確信が持てているのか。
それは6年前によく口にしていた毒と同じような味がしたからだ。
口に含んですぐには気づけなかったが、いつもの料理の深い味わいの中に微かに残る、苦味と酸味。
まるで隠し味のように現れるあの味を味わった後、私はいつも体調不良を起こしていた。
今日のスープはあれを思い出させるようなそんな味だった。
「…はぁ」
着替えもせず、そのままの格好で腹痛に耐えるように、ぎゅぅと自身の体を抱きしめ、深く息を吐く。
この毒が私を再び襲っているということは、6年前と同じように誰かが私に意図して毒を盛ったからだ。
それは一体誰なのか。
まさかセオドア?レイラ様が帰ってきたから邪魔になった私を排除する為に嫌がらせを再開した、とか?
だが、セオドアは何故か私がここから出ることを反対していたはず。
では一体誰がこんなことを?



