放課後。わたしは、「どうしてさっき先生はわたしのこと名指ししたんだ……恥かいたぁ……」だなんて思いながら、世界史の授業を受けていた教室に向かっていた。忘れ物をとりにきたのだ。


教室の前にたどり着く。ドアをスライドさせると、


「あれ、」


虹羽ちゃんと思わしき後ろ姿が目に入る。


うん、あの綺麗なポニーテールは虹羽ちゃんで間違いない。


すると、後ろ姿の主はゆっくりと振り返った。虹羽ちゃんの切れ長の瞳と目が合う。


「浅井さん。忘れ物?」


「うん。虹羽ちゃんは?」


「わたしは……」


虹羽ちゃんはそう言いかけると、再び窓の外に視線を移した。


どうしたんだろう?


虹羽ちゃんは普段からわりとぼーっとしているけど、今は特にぼんやりしているように見える。