「・・・・・・さん。浅井さん」


頬をぺちぺちと叩かれ、わたしは目を覚ます。


重いまぶたをどうにか持ち上げると、そこには心配そうな顔で私を見つめる虹羽ちゃんがいる。


「寝てたのにごめんね。うなされてるみたいだったから、おこしちゃった」


あたりを見回すと、ここはどうやら室内であるらしいことが分かる。


「虹羽ちゃん、ここ、どこ・・・・・・?」


「ここ?うーん・・・・・・研究所だよ」


「研究所?」


「うん。わたしが研究『されてる』、研究所」


「虹羽ちゃんが・・・・・・?」


「そう。不老不死の生命体なんて、格好の研究材料でしょ」


虹羽ちゃんが自嘲気味に笑う。


どうして、わたしはこういうときに気の利いた言葉を掛けられないんだろう・・・・・・。


「あのね、浅井さん、七時間くらい前かな、海で倒れて、だからおんぶしてここまで連れてきた」


「ええっ」


じゃあつまり、わたしは七時間くらい寝ていたってことだ。


「浅井さん、もしかして今日ずっと体調悪かった?わたしに付き合わせて、無理させちゃったかな」


虹羽ちゃんが申し訳なさそうに眉尻を下げる。


「いや、虹羽ちゃんのせいじゃないよ。ただの寝不足だから」


「その寝不足って、わたしのせいだったりしない?」


図星。虹羽ちゃんにはなんでもお見通しみたいだ。


わたしが小さくうなずくと、


「ねえ浅井さん、急にこんなこと言うのは申し訳ないって、分かった上で言うんだけどね」


と虹羽ちゃんが言った。


「もう。我慢できないから。わたしのこと、どうにか今日中に殺して」


***