かつての光について

海にくるぶしを浸して、数十分が経ったころ。


虹羽ちゃんは、不意に言った。


「あ、そうだ」


「ん?」


「ねぇ、浅井さん。お詫びとはいえ、わたしだけ浅井さんに殺してもらうなんて不公平だし、なにかわたしへのお願いがあったら聞いてあげるよ」


「え……」


虹羽ちゃんのその言葉を、わたしは頭の中で反芻する。


わたしは消えいるようなこえで、言葉をこぼす。


「死なないで、ほしい」


こぶしをぎゅっと握りながらそう言う。


虹羽ちゃんはきょとんとした表情をしたのち、ぷはっと笑う。それから、わたしに近づいて、わたしのみみもとで


「浅井さん、すごぉく自己中だね。わたしの希望とか、どうでもいいんだ?」


と囁いた。


その虹羽ちゃんの言葉に、わたしの鼓動ははやくなる。


この人には、わたしの汚い部分を見透かされている。