かつての光について

虹羽ちゃんが急に駆けだした。


わたしも急いで後を追いかけるけれど、砂浜の地面はふかふかとしていて上手く走れない。


20メートルくらい走ったところで、虹羽ちゃんはスクールバッグを宙に投げた。


スクールバッグは放物線を描いて砂浜へと落ちる。


砂埃が立ちこめる。わたしは思わず咳き込んだ。


虹羽ちゃんは靴もソックスもぽいぽいっと投げ捨てて、海へ行く。


わたしも虹羽ちゃんをまねて、海へ走った。


「冷たいかと思ったけど、ぬるいね」


くるぶしまでを海に浸した虹羽ちゃんが言う。


わたしもそうだねと言った。


虹羽ちゃんは浅瀬をちゃぷちゃぷと駆けていき、そして途中で振り返った。


虹羽ちゃんは、最高の笑顔をしていた。


きっと、きらきらした笑顔ってこういう笑顔のことを言うんだろうなっていう感じの、そんな笑顔。