かつての光について

ふいに、また車掌さんのアナウンスが流れる。


『復旧には数時間かかる見通しです。お急ぎのお客様には大変ご迷惑おかけいたします』


数時間か・・・・・・。


「虹羽ちゃん、どうする?」


「んー。浅井さん、電車がまた動き出すまで、なにかおもしろい話して」


「えええっ」


虹羽ちゃん、それは無茶ぶりが過ぎるって。


わたしはうーんうーんとうなる。


面白い話・・・・・・なんかあるかなあ。


あ、そうだ。


「面白いかは、わからないけど」


「うん」


「虹羽ちゃんの好きなところならいくらでも語れるよっ」


わたしがガッツポーズをしながら自信満々の表情でそう言うと、虹羽ちゃんはあきれたように小さく笑った。


「なんで浅井さんはそんなに私のこと好きなんだか」


「だって、だってっ。入学式のあの日、虹羽ちゃんが助けてくれて。本当に運命の推しに出会えたって、そう思ったんだよ!」


「ふふ」


わたしは思い出す。虹羽ちゃんとはじめて出会った日の、あのやわらかな春の日差しを。


わたしが思い出にひたっていると、虹羽ちゃんがゆっくりとポニーテールをほどいた。


さらりとした虹羽ちゃんの髪の一束が、隣に座っていた私の肩にもかかる。


虹羽ちゃんの髪、良い匂い。


そう言えば、あのときの虹羽ちゃんも、髪、下ろしてたなぁ。