虹羽ちゃんがわたしの手を取り、


「エスコートしますよ、お嬢様」


と笑った。


あっけにとられていると、


「行こう、わたしの持論だけど、海は朝がいちばんきれい!」


と虹羽ちゃんがわたしの手を取り走りだした。


体をぐんっと引っ張られ、わたしは転びそうになる。


それでもなんとかこらえて、走って虹羽ちゃんについて行く。


振り返ると、校門のところで守衛さんが不思議そうな顔をしてわたしたちを見ているのが目に入った。


虹羽ちゃんの手は細くて、でもわたしの手を握りしめる力は強くて。


この人に人生を壊されるなら、それはとても幸福なことなのかも知れないと思った。


***