あのね、笑っている人がいるの。
家でも、通学路でも、学校でも。
どこにでも現れるの。
いつも同じ、黒くて長い髪の、女の人。
黒いワンピースの、女の人。
視界の端でずっと笑ってるから、つい、視線がその人に向いちゃうんだ。
でもね、そうすると一瞬だけ。
その人と、目が合うんだけどね。
目が合うとその人、怖い顔で私を見るの。
だからね、きっとなんだけど。
その人とは、目が合ったら駄目なの。
だから私、視界の端で笑っててもらうことにしたんだ。
見ないように。
見ないようにしてるんだ。
近づいてきてるのは、気のせいだよね?



