あのね、招き猫がいたの。
通学路のちょうど真ん中の道に。
両手に収まるくらいの、ちょうどいい大きさの招き猫。
左手を上げて、真っ直ぐ前を見つめてるの。
ゆっくり近づいてみるとね。
くりっとした黒い目が、私の方を向いたんだ。
でも、何もしてこなかったから私、招き猫の体を触ってみたの。
つるつるとした陶器の体。
ひんやりしていて気持ちがよかった。
招き猫はしばらく私のことを見てたけど。
また、前に視線を戻してたたずんでた。
左手を上げてる招き猫は、人をまねくらしいけど。
それじゃあ、あの招き猫は。
道の真ん中で誰を、どこにまねこうとしてたんだろうね。



