あのね、大きな犬がいたの。
学校の帰りでね、辺りはもう薄暗くなってた。
首輪をしてたから、どこかに飼い主がいたんだと思う。
その犬がね、何かを口に咥えて持っていたの。
よく目を凝らすと、ネズミがいてね。
血まみれだったけど、まだ生きて動いてた。
必死にもがいてるネズミを、犬は口から離して地面に落として。
それから、ぎゅって前足で踏んづけてた。
まるで子供がおもちゃで遊んでるみたいに。
そういうのって猫がするイメージだったから、私はそれをジッと見ていたの。
最初は元気だったネズミも段々と弱っていって、ついにピクリとも動かなくなっちゃった。
動かないネズミを、犬が何度か鼻先でつついて。
死んじゃったって分かったんだろうね。
私の方を見たの。
心臓がどきどきしてきた。
あの犬の、次の獲物は私なのかもね。



