流風とはベランダごしで何度か話すようになり、「茉莉さん」「流風君」と呼び合うくらいには仲良くなった。
そんな日々を過ごしながら、ある日のこと。
「うわぁー……」
自分の最寄り駅までの地上出口で立ち止まる。
ゲリラ豪雨だ。
ビニール傘、買いに行くかと思っていたら、肩を叩かれる。
振り返るとそこにいたのは流風。
「流風くん」
「茉莉さん、良かったらコレ使って下さい」
差し出されたのは折り畳み傘。
「この豪雨で慌ててビニール傘買ったんですけど、鞄に折り畳み傘あるのすっかり忘れてて」
「ありがとう、使わせてもらいますね」
ありがたくお借りする。
一緒に歩きながら流風は今日は初めてのラジオ出演したと話す。
「終電の時の先輩なんですけど、同じ事務所だからって自分のラジオにゲストに来ないかって誘われまして、ほんとありがたいです!」
「可愛がられてるんですね」
「…だといいですが、それで放送が今週なんで俺の部屋で一緒にラジオ聴きませんか?」
「え?」
一瞬聞き間違いかと思って驚くと流風は自分の発言に気付きアワアワ。
「いや、やましい気持ちなんてありませんから!ただ…茉莉さんにラジオ聞いてほしくて……すみません」
しょぼんとする流風。
「お邪魔しますね。一緒にお夕食どうですか?何か作って持っていきます」
付き合ってもない異性の部屋に行くのは警戒すべきだが流風なら大丈夫と判断した。
流風は嬉しそうに「ありがとうございます!」と笑う。
「…その時に……を……です」
聞こえないほど小さい声で呟く流風。
ラジオ放送日。
流風の部屋で一緒に夕飯を食べている間も流風はずっとソワソワしていた。
『皆様、こんばんは〜。今日もはじまりました〜……今日はね、僕の事務所の期待の新人をゲストにお招きしました〜』
『か、片霧流風です!』
『あはは〜緊張しすぎ〜』
「この方が先輩?」
「はい、国民的なアニメにも出演してる方です」
流風はラジオでも茉莉とラジオを聴いている今も緊張しまくっている。
『それじゃあ、今日もおやすみ〜またね〜』
ラジオが終わった。流風の緊張が切れてフニャフニャになっていた。
そんな流風を「可愛い」なんて言ったら失礼だろうか。
流風は冷蔵庫から飲み物をイッキ飲み。
「落ち着きました?」
「いえ、俺はまだ緊張しっぱなしです。……茉莉さん、お伝えしたい事があります」
真剣な顔の流風。
「実はこの間、アニメのオーディションがありまして、主人公の相手役に受かりました。茉莉さんのおかげです!」
「おめでとう!私のおかげ?」
拍手をしながら笑顔で祝うが、流風の表情には笑顔はなく固い。
「秘守義務があるので詳しくは言えませんが、恋愛漫画作品なんですがオーディションでは主人公の女の子に愛を伝える台詞がありまして、その台詞に俺の茉莉さんへの気持ちを込めたら受かったんです。…だから茉莉さんのおかげです」
頬と耳を真っ赤に染めながら恥ずかしそうな流風。
「私への気持ち…愛を伝える台詞……」
急にドキドキしてきた。
それって……。
「茉莉さん、好きです。俺は金ないから茉莉さんに苦労させるかもしれませんが、こんな俺を支えてほしいです。付き合ってください」
「はい、あなたの近くで応援させてください」
流風の手をギュッと握る茉莉。
お互い、抱きしめ合う。
「茉莉さん、好きです」
「私も……」
耳元で愛を囁やく声は甘くとろけてしまいそう。
あの日、出会わなかったらお互い無関心なままだっただろう。
あの日、声を掛けてよかった。
【完】
そんな日々を過ごしながら、ある日のこと。
「うわぁー……」
自分の最寄り駅までの地上出口で立ち止まる。
ゲリラ豪雨だ。
ビニール傘、買いに行くかと思っていたら、肩を叩かれる。
振り返るとそこにいたのは流風。
「流風くん」
「茉莉さん、良かったらコレ使って下さい」
差し出されたのは折り畳み傘。
「この豪雨で慌ててビニール傘買ったんですけど、鞄に折り畳み傘あるのすっかり忘れてて」
「ありがとう、使わせてもらいますね」
ありがたくお借りする。
一緒に歩きながら流風は今日は初めてのラジオ出演したと話す。
「終電の時の先輩なんですけど、同じ事務所だからって自分のラジオにゲストに来ないかって誘われまして、ほんとありがたいです!」
「可愛がられてるんですね」
「…だといいですが、それで放送が今週なんで俺の部屋で一緒にラジオ聴きませんか?」
「え?」
一瞬聞き間違いかと思って驚くと流風は自分の発言に気付きアワアワ。
「いや、やましい気持ちなんてありませんから!ただ…茉莉さんにラジオ聞いてほしくて……すみません」
しょぼんとする流風。
「お邪魔しますね。一緒にお夕食どうですか?何か作って持っていきます」
付き合ってもない異性の部屋に行くのは警戒すべきだが流風なら大丈夫と判断した。
流風は嬉しそうに「ありがとうございます!」と笑う。
「…その時に……を……です」
聞こえないほど小さい声で呟く流風。
ラジオ放送日。
流風の部屋で一緒に夕飯を食べている間も流風はずっとソワソワしていた。
『皆様、こんばんは〜。今日もはじまりました〜……今日はね、僕の事務所の期待の新人をゲストにお招きしました〜』
『か、片霧流風です!』
『あはは〜緊張しすぎ〜』
「この方が先輩?」
「はい、国民的なアニメにも出演してる方です」
流風はラジオでも茉莉とラジオを聴いている今も緊張しまくっている。
『それじゃあ、今日もおやすみ〜またね〜』
ラジオが終わった。流風の緊張が切れてフニャフニャになっていた。
そんな流風を「可愛い」なんて言ったら失礼だろうか。
流風は冷蔵庫から飲み物をイッキ飲み。
「落ち着きました?」
「いえ、俺はまだ緊張しっぱなしです。……茉莉さん、お伝えしたい事があります」
真剣な顔の流風。
「実はこの間、アニメのオーディションがありまして、主人公の相手役に受かりました。茉莉さんのおかげです!」
「おめでとう!私のおかげ?」
拍手をしながら笑顔で祝うが、流風の表情には笑顔はなく固い。
「秘守義務があるので詳しくは言えませんが、恋愛漫画作品なんですがオーディションでは主人公の女の子に愛を伝える台詞がありまして、その台詞に俺の茉莉さんへの気持ちを込めたら受かったんです。…だから茉莉さんのおかげです」
頬と耳を真っ赤に染めながら恥ずかしそうな流風。
「私への気持ち…愛を伝える台詞……」
急にドキドキしてきた。
それって……。
「茉莉さん、好きです。俺は金ないから茉莉さんに苦労させるかもしれませんが、こんな俺を支えてほしいです。付き合ってください」
「はい、あなたの近くで応援させてください」
流風の手をギュッと握る茉莉。
お互い、抱きしめ合う。
「茉莉さん、好きです」
「私も……」
耳元で愛を囁やく声は甘くとろけてしまいそう。
あの日、出会わなかったらお互い無関心なままだっただろう。
あの日、声を掛けてよかった。
【完】



