新婚旅行江戸日和

『タイムマシンを起動します。時代は江戸。場所は江戸』

機械音声が響き渡る。それと同時に機械が動き出すのがわかった。動きが早くなっていく。私は翠さんに抱き付いて目を閉じる。

「ついたみたいだね」

機械の揺れが収まり、私は目を開ける。翠さんがタイムマシンのドアを開けた。目の前に広がった景色に私は「わぁ……!」と声を上げた。

瓦屋根の城下町には当然ビルなんて一つもない。空が広く見える。道を歩いている人はみんな着物姿。……本当に江戸時代に来たんだ。

「茜、ちょっと着替えようか」

翠さんに着物を渡される。そうだ。日本は十八世紀末まで鎖国をしていた。交流があったのはキリスト教を広めない中国とオランダだけ。しかも貿易が許可されたのも長崎だけ。厳しい時代だ。

「翠さん。どうかな?」

着物に着替えて翠さんの前に立つ。同じく着物に着替えた翠さんはいつもと雰囲気が違う。ドキドキと胸が高鳴っていくのがわかった。