いつか「ほんと」になれたら

 本当に心配になってきた。
 やっぱり今日の僕は何かがおかしい。

 

 絵本の中の世界では、僕にも妹はいた。ついでに、義妹(弟の嫁)もいた。

 だから、何というか、同じ兄としては少しだけ、燐人と自分を重ねてしまう。


 感情を持たなかった僕たち兄妹は、王族という家庭環境もあり、もちろん仲はそこまで良くなかった。良くて味方、悪くて知人といった程度だ。

 咲凜と燐人には、僕と妹の分まで仲良くして欲しい。
 互いに信頼し合って、背中を預けられる関係であって欲しい。
 
 心からそう思っているのは事実だ。
 なのに。

 どうして、こんなに嫌だと思う。


 咲凜に味方が増えるのは良い事だ。

 今までのひとり親家庭でも幸せそうだったけど、やっぱり沢山の相手から愛を貰えるのは必要なこと。


 そんなことは充分に分かっている。

 僕の1番の願いは、咲凜が幸せになること。
 この先、咲凜にはとびっきりの幸せが待っているんだから、僕は心から応援するべきだ。

 
「今日からよろしくね、りんとくん」
「こちらこそだよ、咲凜」


 咲凜のことは、最初は絵本の持ち主くらいにしか思っていなかった。

 驚いた顔が可愛くて、見開かれた目は黒曜石よりも綺麗で、もっと見てみたいなって。ほんとにそれだけだった。
 

 一緒にいるうちに、咲凜との時間は僕にとってかけがえのない宝物になった。
 

 
 それでも、いつか咲凜が僕を必要としない日が来たのなら、繋いだ手を離せるつもりでいた。
 咲凜に限って、そんなことはないと思ってるけど。…ほら、また言い訳して。


 咲凜を離す必要がないんじゃなくて、本当は離したくないんだ。



 僕は絵本の王子様。

 与えられた役をただ演じるだけで、僕には感情なんてなかったはずなのに。



 どくどくと脈打つ、この感情はいったい何だろう。