いつか「ほんと」になれたら



「俺は…いつだって“偽物”なんだよ。学校でどんなに「学園の王子様」ってもてはやされても、俺は本物にはなれやしないし。咲凜の王子様もエリックだし、ね」
「燐人くん……」


 知らなかった。わたしは、何ひとつ知らなかった。

 女の子たちから慕われる影で、燐人くんが悩んでいたことも。「学園の王子様」って、その褒め言葉にも傷ついていたことも。


「絵本、勝手に持ち出したこともごめん」
「……燐人くんは、悪くないよ」


 燐人くんの考えてきたことは、知らなかったけど。それでも、自分が絵本を持っていることに気づいた燐人が、すごく傷ついた表情をしていたのは見てたよ。


「僕も咲凜に賛成」


 絶妙な間で挟まれたエリックの発言に、思わず笑みを浮かべる。
 隣でわたしの肩を抱くエリックも、向かい合わせにいる燐人くんも、同じ表情をしていた。


 やっと。やっとここまで来ることができた。
 エリックとも、燐人くんとも仲直りができた。


「2人のこと、好きでいられてよかった」
「咲凜がそう言ってくれるなら僕も、これから燐人のこと、好きになってみようかな」


 わたしがどちらかを好きじゃなくなっていたら、絶対に訪れない未来だったと思う。