いつか「ほんと」になれたら

「──それで、芽蕗ちゃん。話って言うのは?」


 向かい側の席に座った燐人先輩が、頬杖をしながら尋ねてくる。他の男子だったら、やる気がないと思われそうな体勢だけど、燐人先輩がすると様になってしまう。

 咲凜を避けたりしているこの人のことを、うちが嫌いになれないのはこういうところだ。
 複雑すぎる家庭環境を知らない女子生徒たちからは、相変わらずモテまくっているらしいけど。


「突然呼び出したりして、すみません。咲凜のことをお話しておいた方がいいかと思ったので」
「…咲凜のこと?」


 えみりーの名前を上げると、予想通り燐人先輩は目の色を変えた。
 ごめん、えみりー。これもうちと艾葉の作戦ではあるけれど、うちはあなたを裏切ります。


「はい。咲凜は、艾葉の家で一時的に預かることになりました」
「どうして?」
「分かりませんか、燐人先輩。咲凜を遠ざけて、傷つけたのはあなたですよ」