紫苑が紬のことを気になっていると知ってから、
私の学校生活は、それはそれはとてもとてもつまらないものになっていた。

中一のときに同じクラスになれず、
中二でもその思いは敗れ、
中三でやっと同じクラスになれたと思えば、
好きな人は私の親友が好きだと言う。

なんて悲しい恋だろう。
本当に私がとてつもなく可哀想。

相変わらず授業中も紫苑の後ろ姿を見ながら、
私はひたすらため息を吐いていた。

その時、隣の席の野球部男子が話しかけてきた。

「どしたん、そんなため息吐いて。
幸せが逃げてくぞ?」

如月爽汰。名前通りの爽やかチャラチャラ男である。
私は結構苦手だけど、
なんでか中学三年間ずっと同じクラス
という感じである。

本当に、可哀想な私。
今日は家に帰ったらお菓子でも食べて
労ってあげよう。

苦手でも無視する訳にはいかないから、
最大限の愛想笑顔でこたえる。

「んー、ちょっと神様に呆れちゃってね。
まあ、大丈夫だから気にしないで!」

もう話しかけてくんなオーラを全面に出して、
私は如月に言った。

しかし、如月は鈍感だった。

「神様に呆れたあ?
んなこと言ったらバチあたるぞ?笑」

笑ってんじゃねえよ、おい。
こっちは真剣に悲しんでるのに、なんて奴だ。
お前こそバチがあたるぞ。

「大丈夫大丈夫」

大丈夫ばあさんになりながら、なんとか
如月との会話を終える。

モテモテチャラチャラ男は、扱いに困る。
嫌われないように好かれないようにを
意識しながら関わるのは、結構大変である。

そのあとは、気づいたらまた放課後になっていた。