春って、こんなに暑かったっけ。

新しいクラスの席表を見て、私はひとり、心の中でガッツポーズを決めた。

紫苑 陽翔と、同じクラス。
しかも、窓際の席で、なんと紫苑の
斜め後ろという神配置。

運命って、案外あるかも。

「心結〜、席こっちこっち!」
「あ、ごめんごめんっ!」

教室の隅で手を振ってたのは、親友の紬。
髪型も制服の着こなしも相変わらず完璧で、女子の視線を集めまくってる。
私はというと、今日もネクタイぐちゃぐちゃで、前髪も崩れまくってた。

同じ人間でも、こうも違うもんかね。

「…なにニヤけてんの」
「え!? ニヤけてた!? やっば、顔に出てた!?」
「うわ、キモ。絶対なんか考えてたでしょ」

紬にジト目で見られて、慌てて首を振る。
でも内心、心臓バクバクでやばかった。
だって、だって、だって──

「心結、これ配るの手伝ってくれる?」

ふいに、後ろから声がして振り返る。
いた、紫苑。
まるでお日様が程よく当たってる植物みたいな柔らかい笑顔でプリントを差し出してくる。

「い、いいよ!やるやる!」

震える手を隠しながら、プリント束を受け取った。
指がちょっとだけ触れた気がして、心臓がバクって跳ねた。

…ってか、これはもう恋じゃん。恋じゃなきゃ無理じゃん。