夏の暑い日、私は早朝から汗だくで花を運んでいた。
「瑞希、ヒマワリの残り出して」
「はいよ。花音、ついでにトルコキキョウも持ってって。たぶん出ると思う」
「わかった!」
今日は瑞希と二人で市場に卸に来た。お盆は過ぎたけど、お彼岸に向けて仏花はまだ出るから、忙しさは引かないまま。
やっと客足が落ち着いて、残りが捌けたら店仕舞いかな……というころに、あの人はやってくる。
「お疲れさま。今日は何がある?」
「よーお、藤乃。今日は小さめのヒマワリと、残ってるトルコキキョウ、あとは……」
先に声をかけたのは、今日は瑞希だった。
藤乃さんが私を見つけたときに、ふっと緩むあの笑顔が好き。
何ていうか……図々しいかもしれないけど、この人は私のこと好きなんだなって思えるから。
藤乃さんは、瑞希と話しながら花を一つ一つ見ている。
二人は幼馴染なこともあって仲がいいし、二人ともプロだから話のテンポが良くて聞いていて楽しい。……私も、いつかはあんなふうに話せるようになりたい。でも、まだちょっと遠い。
「花音、リシアンサスってもうない?」
「全部出たよ。明日……明後日なら出せます」
「それでいい? なら、持ってくけど」
「じゃあお願いしようかな。あとグラジオラスと、ダリアは何がある?」
聞かれた瑞希が、ちらっと私に視線を向けた。
藤乃さんもこちらを見たので、急いで思い出す。
「えっと、二重咲きとポンポン、それから内巻きがあります」
「じゃあそれも全部持ってきてほしい」
藤乃さんが頷くと、瑞希が笑って肩をすくめた。
「ダリアは、藤乃が好きそうな品種を花音が揃えたんだ。良かったな、正解で」
「ちょっと、瑞希! 言わなくていいから!」
「そうなの?ありがとう、花音ちゃん」
「い、いえ……」
藤乃さんがふわっと微笑んで、私の頬もつられてゆるんだ。
にやけそうになるのをこらえながら、藤乃さんの注文をメモに取る。
「じゃあ、明後日伺うときに、こちらも持っていきますね」
「よろしく。あ、そうだ、花音ちゃんに聞きたいことがあって。ピアス、開けてたっけ?」
急に話が変わって、ちょっと驚く。ピアス……?
「瑞希、ヒマワリの残り出して」
「はいよ。花音、ついでにトルコキキョウも持ってって。たぶん出ると思う」
「わかった!」
今日は瑞希と二人で市場に卸に来た。お盆は過ぎたけど、お彼岸に向けて仏花はまだ出るから、忙しさは引かないまま。
やっと客足が落ち着いて、残りが捌けたら店仕舞いかな……というころに、あの人はやってくる。
「お疲れさま。今日は何がある?」
「よーお、藤乃。今日は小さめのヒマワリと、残ってるトルコキキョウ、あとは……」
先に声をかけたのは、今日は瑞希だった。
藤乃さんが私を見つけたときに、ふっと緩むあの笑顔が好き。
何ていうか……図々しいかもしれないけど、この人は私のこと好きなんだなって思えるから。
藤乃さんは、瑞希と話しながら花を一つ一つ見ている。
二人は幼馴染なこともあって仲がいいし、二人ともプロだから話のテンポが良くて聞いていて楽しい。……私も、いつかはあんなふうに話せるようになりたい。でも、まだちょっと遠い。
「花音、リシアンサスってもうない?」
「全部出たよ。明日……明後日なら出せます」
「それでいい? なら、持ってくけど」
「じゃあお願いしようかな。あとグラジオラスと、ダリアは何がある?」
聞かれた瑞希が、ちらっと私に視線を向けた。
藤乃さんもこちらを見たので、急いで思い出す。
「えっと、二重咲きとポンポン、それから内巻きがあります」
「じゃあそれも全部持ってきてほしい」
藤乃さんが頷くと、瑞希が笑って肩をすくめた。
「ダリアは、藤乃が好きそうな品種を花音が揃えたんだ。良かったな、正解で」
「ちょっと、瑞希! 言わなくていいから!」
「そうなの?ありがとう、花音ちゃん」
「い、いえ……」
藤乃さんがふわっと微笑んで、私の頬もつられてゆるんだ。
にやけそうになるのをこらえながら、藤乃さんの注文をメモに取る。
「じゃあ、明後日伺うときに、こちらも持っていきますね」
「よろしく。あ、そうだ、花音ちゃんに聞きたいことがあって。ピアス、開けてたっけ?」
急に話が変わって、ちょっと驚く。ピアス……?



