「うー」
「え、どしたの」

 気づいたら花音ちゃんが口を押さえて震えている。
 水を渡したら一気に飲みほした。

「辛いですっ!!」
「そう? 花音ちゃん、辛いの苦手だった?」
「そんなことはないはずですけど……。まだちょっとヒリヒリします」
「水、おかわり取ってくるね」
「スミマセン……」

 水を差し出すと花音ちゃんは受け取って飲み干してから、やっと笑った。

「ありがとうございます。藤乃さんもパスタ食べますか?」
「ありがとう」

 花音ちゃんが手元でフォークをくるりと回すと、パスタがきれいにまとまって、そっと差し出された。

「……おいしい。バジルだよね。いい匂いだ」
「ですよね。ハーブも気になるんですけど、なかなか手が出なくて」
「育てるのはそんなに難しくなさそうだけど、他の植物との兼ね合いがあるからね」
「そうなんです!育てるなら、専用のプランターとかもちゃんと用意したいなって……」

 花音ちゃんは熱心に、ハーブや花の話を続けている。このままずっと、その声を聞いていたくなる。
 やっぱり俺はこの娘が好きだ。
 会うたびにそう思ってる気がする。
 食べ終えたあと、一度うちに戻って、花音ちゃんの着替えを待つ。駐車場まで見送って、花屋に向かうと葵が花の補充をしていた。

「藤乃くん、おかえりー」
「ただいま、葵。あのさ、聞きたいんだけど」
「なあに?」

 葵は手元のタブレットに花の在庫数を入力している。
 俺はカウンター内のパソコンで午前中の売れ行きを確認する。

「好きな人と、ずっと一緒にいたいって思ったら……やっぱり、それをちゃんと伝えなきゃダメなんだよな」
「はあ?」

 葵が顔を上げる。