「男の子って、蝉の抜け殻好きですよね。昔から、たまにもらいます」

 花音ちゃんは落ち着いた様子で起き上がると、蝉の抜け殻を無言でゴミ袋に放り込んだ。
 たまに、って……?

「え、花音ちゃん、昔からこういうことあるの?」
「ありますよ」

 何でもなさそうに花音ちゃんは頷く。

「小学生の頃は、セミとかヘビの抜け殻をよくもらってました。中学以降は“大きい”とか、いろいろ言われるようになりましたけど……」
「こんなにかわいいのに。あ、今度、小学校から高校までの卒アル見せてよ」
「嫌です。でも私も藤乃さんのアルバムは見たいです。高校のは瑞希見せてもらいます。帰ったら出してもらおう」
「ず、ずるい!」

 ……つまり、花音ちゃんは無自覚なまま、けっこうモテてたってことだ。
 わかるよ。かわいいから。
 それに中学生高校生の男子が、好きな子に素直にかわいいかわいいと言えないのもわかる。
 問題は、それで花音ちゃんが傷ついて、自信をなくしているということなんだけど。