陽射しがじりじりと照りつけるなか、俺は海沿いの公園にいた。
 隣には花音ちゃんがいて、「今日もいい天気ですね!」とニコニコしている。
 楽しいデート……だったらよかったんだけど、実際は今日も仕事。しかも、地域の子ども向けの花植えイベントの手伝いだ。
 最近、瑞希と一緒に地域の青年会に顔を出すようになって、その流れで頼まれた。

「園芸サークルで秋向けに花壇を入れ替えるんだけど、せっかくだし若い人にも参加してもらって、地域の子どもたちに顔見せしといてよ。顔を覚えてもらえると防犯にもなるからさ」

 ……というわけだ。
 最初は俺と瑞希の二人で参加する予定だったけど、園芸サークルの年配の人たちが、「若い男ばっかりじゃな……女の子は?」なんて言い出した。

「いますけど、そういうセクハラみたいなことを言う人のために女の子を差し出すようなことはしたくありませんね」
「藤乃、言い方。セクハラ野郎に直接そう言っちゃダメだろうが」

 つい口にしたら、親父に怒られた。でも、由紀さんは、

「うちの娘を出してもいいけど、番犬つけといてね」

 なんて言って、ニヤッと笑った。
 ……そんな流れで、今は花音ちゃんと花屋の制服を着て並び、花の苗を配っている。

「苗の茎を持ってね、そう、土ギリギリのところ」
「花壇は深めに掘って……」
「優しく土を被せてね」

 そんなふうに声をかけながら、花壇の間をゆっくり歩いて回る。
 花音ちゃんが小学生の男の子たちを手伝っていたから、さりげなく様子をうかがった。

「お姉さん、でっかいねー。何食べたらそんなにでっかくなるの?」
「好き嫌いしないで、なんでも食べたら大きくなるよ」
「大人はみんなそう言う」
「みんながそう言うってことは、それが正攻法なんだよ」
「そっかあ……」

 ……花音ちゃんは、子ども相手でも手を抜かない。
 いつだって真面目で、丁寧に応える。
 ……やっぱり、好きだな。